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hans arp/矢代幸雄


*マンガ論はちょっとお休み

すぐ行くのがもったいなくて、しばらくとって置いたのだけど、仕事が一段落したこともあり、本日休業ということで「ハンス・アルプ展-20世紀彫刻の開拓者」を観てきた。
もうアーティストの鑑と呼ぶべき存在。掛け値なしに素晴らしいと思った。

以下ざっとの印象論を。

アルプという作家はマティスやピカソやミロの陰、あるいはデュシャンやシュルレアリスムの派手派手しく禍々しい作家群の陰で、どちらかというと目立たない地味な存在ではあるような感じなのだが、20世紀の造形作家としては、ずば抜けて作品の質の高い、モダニズムの作家群において最重要クラスの優れた芸術家であると言っていいと思う。逆にアメリカの戦後現代美術は、このアルプの活き活きとしたバイオモルフィックな「抽象」探究の、しかも実直にして繊細なその職人仕事の凋密な仕上げに宿った「ユーモア/ポエジー」の意義を掴み損ねたのではないか?(抽象表現主義に足りないのは端的に「ユーモア」なのではないか)という気がしてくる。もっともエルスワース・ケリーあたりにはアルプの継承を感じるけれど。

展示作品は最初期のオーソドックスな油彩自画像、裸婦素描から、コラージュ、ドゥローイング、木版、リトグラフ、タペストリー、絨毯マット、クッション、木製レリーフ、ジュラルミン、大理石、ブロンズ彫刻と多岐に渡るが、それぞれが精緻な探究の証としてタガの狂いもなく緊密/有機的に連関し合っていて、その、ことに彫刻作品のフォルムのどこから観ても優雅な、多次元的な豊饒さには、心底驚かされる。立ち去り難く、おもわず手で触り、頬ずりしたくなるようなフォルム。
展覧会にいって、ことに現代彫刻の場合、この作品「欲しい」と思うことは本当にめったにないが、アルプの作品に関しては、本当に「手に入れたい」という欲望を感じる。

アルプといえば、ダダの創始者のひとりであり、シュヴィッターズにコラージュ技法を伝授したというくらいだから、その20世紀美術における影響力の甚大さを伺い知れるというもので、マティスの切り絵シリーズも、アルプの影響のように見えてきてしまったのだがどうなのだろう。
ともかくも、一旦伝統を切断した上で、詩とともに歩み、オブジェ言語という日用品と人体を繋ぐ独自の方法論を編み出しつつ「生命」のフォルムにこだわり、造形言語の有機的な連関/展開を地道に探究しつつ、そのメタモルフォーゼの可能性を追い求めるに、アイデア/プロセス勝負ではなく、実際に「結果」として凋密な作品の数々をものにした芸術家に大きな畏敬の念を感じる。

それから、同時サブ企画の「矢代幸雄資料展」。地味、渋いといえば、そうなんだけれど、非常に興味深く観た。恥ずかしながら、いままであまり気にしたことのなかった、ボッティチェルリ研究で世界的な水準を達成した美術史家、矢代幸雄(1890-1975)の若き日の水彩画(これが凄くいい)や著書、研究ノートや書簡、美術工芸コレクション、遺品など。西洋古典美術研究の極みにおいて日本美術の特質を探究したひとなのだった。
これまた実直精緻な研究ノートを覗き込む。今日は喝を入れられた感がある。
| 展覧会 | 21:26 | comments(1) | trackbacks(5) |